まだ学生だった頃、オーケストラプローべの見学での事です。
心地よい緊張感の中、指揮棒の動きとともに和弦が静かに滑り出す。数小節遅れてホルンが3個の音を紡ぎ出すその時指揮棒が止まった。それと同じくして閉じられていた指揮者のまぶたがゆっくりと開き奏者の方に向くと、
「Mein Herr、 そこの入りはもう少し小さく。」
奏者もこの時はお安いご用とばかりに頷き、最初からもう一度弦の柔らかな和音から始まる。そして先程の箇所でまた指揮棒が止まる。今度はずいぶんと小さく、緊張感とともに美しく聞こえていたのですが、指揮者の耳には満足なものでなかったらしい。
「Aber mein Herr、まだ大き過ぎる。」
ハイハイと、これ以上の pp はないぞとばかりに2度目への挑戦。ところがやっぱり指揮棒は止まり指揮者の口が開いた。
「Ja, mein Herr、とっても美しいピアニッシモですが、もっと静かに、もっと遠くで。」
これにはちょっと奏者も目玉をまん丸くして驚き顔。で、チラッと仲間にいたずらっぽく目配せして3度目。
楽器を構えたものの実際には息を吹き込まず、指揮棒にあわせてバルブに乗せた指だけが音列にそって動いていく。もちろん真剣な眼差しを指揮棒に向かわせるのを忘れたりはしない。音がしないままメロディが流れていく時間に、仲間も互に顔を見合わせながら愉快げに唇を泳がせる。ところがどうでしょう、指揮者の顔は満足げにほころび、拍は進んで行き、リハーサルも終了。そして一言、「先程の pp は大変素晴らしかった。」
もちろん本番では客席の耳にもきちんと柔らかい音色が届けられていましたが。
指揮者の耳には楽器から出てくる音より先に楽譜から当然あるべき姿の音が用意されていると思う。それは演奏される音とは異なり、イメージにそった思うがままの音が聞こえてきていたのだろう。結果、音そのものの存在がなくても音楽が成り立つ不思議な瞬間に出会ったのでした。実際にはどうだったのか知るすべもないのですが、彼の耳の奥では舞台上で奏されて出てくる音と共に素敵な音楽を理想の音で共演していたのかもしれません。
普段の練習合奏とかでは楽譜から発してくる音を想い描き、造り上げて行くのですが、知らずと頭に理想の音を模索し響かせ聞いているのだとすると、楽器から奏でられる音とのこの共演もまた音楽のわくわくする楽しみのひとつにもなるのでしょう。 【kuhi】
オーケストラ練習
練習参加者
管 Fl=2 , Ob=2 , Cl=2 , Fg=2 , Hr=3 , Trp=1 , Trb=3(Ex3) 以上15名(女性4名)
弦 V1=3 , V2=3(中1男子1 Ex1), Va=1 , Vc=2 , KB=1 以上10名(女性4名)
合計25名(女性8名)他に女児が2名
練習曲目
ブラームス/交響曲第1番 第1楽章,第4楽章
メンデルスゾーン/交響曲 第1番 第2楽章,第4楽章
指導 中牟田先生
所要時間
19:03~20:15(72分)ブラームス/交響曲第1番 第4楽章
20:15~20:37(22分)ブラームス/交響曲第1番 第1楽章
20:37~20:48(11分)休憩&チューニング
20:48~21:09(21分)ブラームス/交響曲第1番 第1楽章
21:09~21:18( 9分)メンデルスゾーン/交響曲第1番 第4楽章
21:18~21:30(12分)メンデルスゾーン/交響曲第1番 第2楽章
次週練習曲
メンデルスゾーン/交響曲第1番
ブラームス/交響曲第1番
事務局より
(1)次回の練習は芦乃湯会館。
(2)定演負担金徴収中。5月20日(土)練習時までに!
(3)プログラム掲載用のお名前の文字確認。
おやつ
Trp.Mさんよりチビサンダーと蜂蜜飴。